
2019年10月18日。北京駅22時33分発の瀋陽北行き夜行列車「K53号」に乗りました。
日本ではすでに姿を消した「機関車牽引の長編成列車」が、いまも現役で走る中国。
その中でも特別な車両「高級軟臥」に乗り、北京から満洲の中心・瀋陽まで約9時間の旅です。
この路線は、モスクワや平壌へ向かう国際列車も走る“大陸の幹線”。
かつて釜山まで直通していた歴史を持ち、日本とも深いつながりがありました。
今回は、6年前のこの夜の記録を、Facebookの思いで記事から振り返ります。

中国の寝台列車 「高級軟臥」という特別な車両
「高級軟臥」は、2人1室の個室寝台で、個室内に洗面台とトイレまで備えた仕様です。
この「高級軟臥」は、中国のすべての寝台列車に連結されているわけではなく、特定の列車だけに限られています。
残念ながら、中国には一人用寝台というものは存在しません。
指定された個室に入室すると間もなく、女性乗務員が部屋の鍵になっているICカードを届けてくれました。
この夜、私の相部屋は、少し年上に見える中国人の女性。
そうなんです――完全個室の2人部屋にも関わらず、性別で部屋は分かれません。
もっとも、これは特別なことではなく、35年以上前によく乗っていたヨーロッパの寝台コンパートメントでも、性別の区分はありませんでした。
旅の文化として「見知らぬ人と空間を共有する」ことが、当時の列車には当たり前のようにあったのです。

部屋に流れる静かな夜
私が外国人だと分かると、彼女は部屋備え付けのスリッパを静かに差し出してくれました。
その優しさがうれしくも、言葉が通じないため、会話はありません。
私は下段のベッドに腰掛け、彼女は向かいのソファでスマホを操作しています。
部屋の扉は開けたまま、静かな空気が漂う中――列車はゆっくりと動き始めました。
時計を見ると、出発予定の22時33分よりも2分早い。
日本ではあり得ない早発ですが、中国では全員の乗車が確認できると、多少早く発車することもあるようです。

列車が出発して間もなく、用を足そうと思いましたが、
さすがに女性と二人きりの個室内にあるトイレを使うのは気が引けて、
共用のトイレへ行くことにしました。
ところがその際、うっかりICカードの鍵を部屋に置いたまま出てしまい、
戻ると扉は自動でロック。
仕方なく通路を歩いて女性乗務員を探し、事情を説明して鍵を開けてもらうという、
ちょっとしたトラブルを起こしてしまいました。

北京〜瀋陽:国際列車も走る大陸の幹線ルート
このK53号は、北京と瀋陽をノンストップで結ぶ寝台列車。
途中停車駅はなく、中国の列車あるあるで「運転停車すら記憶にない」ほどです。
この路線は、今もなお北京からモスクワ、平壌へ向かう国際列車が走るルートでもあります。
これらの国際列車には、ロシアや北朝鮮の車両が連結されています。
北朝鮮の車両は中国のものと外観の違いがほとんど分かりませんが、
ロシアの車両はシベリア鉄道を走る銀色の外観で、一目でそれとわかります。
この目で見てみたかった――そんな思いを抱きながら、
私は同じ線路を走るこのK53号の振動を感じていました。
そしてこの路線は、戦前の満州時代には釜山まで直通していた歴史を持っています。
まさに日本と大陸を結んだ“陸の道”の名残を今に伝えるルートなのです。
運賃は8,872円(うち手数料457円)。
日本からスマホアプリを使って日本語で予約できるのも印象的で、
ある意味、日本より進んでいると感じました。

世界が変わる直前に体験できた貴重な旅
この旅のわずか数か月後、世界はコロナ禍に見舞われました。
その影響で、国内外の旅行には長い制約が生じます。
思えばこのK53号の旅は、そうした時代の訪れの直前に経験できた、貴重な体験でした。


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