
2025年大晦日。
私は、日本100名城の一つである「姫路城」のスタンプ押印を目的に、姫路を訪問していました。
しかし、姫路に宿泊し、時間に少しゆとりができたこの日、私にはどうしても立ち寄りたい場所がありました。
それが、JR播但線を走る103系電車です。
103系は、かつて大都市の通勤ラッシュを支えた主役ですが、令和の今、その姿を見られる場所はごくわずかです。
2025年の締めくくりに、全線を乗り通すわけではないけれど、あの「顔」を見て、あの「音」を聴きたい。
そんな思いで、ワインレッドの古豪が待つJR姫路駅の播但線ホームへと向かいました。

<昭和を走り抜けた3,447両の伝説>
103系は、1963年(昭和38年)から21年間にわたり、日本最多となる合計3,447両が製造された通勤型電車のスタンダードです。山手線や大阪環状線など、日本の高度経済成長を支えた「動く大動脈」でした。
しかし、令和の今、その姿を見られる場所はごくわずか。
特に、103系本来の「切妻形で高い位置にある運転窓」というオリジナルに近い顔を今も保っているのは、播但線を走る103系3500番台だけといっても過言ではありません。
播但線以外にも103系が残る加古川線や筑肥線の車両は前面デザインが大きく違い、私にとっての「本物の103系」は、ここ播但線にこそ残っていると感じています。

<徹底した「延命改造」が繋いだ命>
播但線の103系3500番台は、1998年の播但線電化時に投入されました。
この際、JR西日本独自の「体質改善40N工事」と呼ばれる徹底したリニューアルが行われています。
・外観の変化
屋根の雨樋が外板と一体化され、側面窓は黒サッシの1枚固定窓に変更。
・内装の進化
壁や床、天井は207系並みの近代的な素材に刷新され、扇風機に代わってライン状のエアコン吹き出し口が設置されました。
・バリアフリー対応
後の改造で洋式トイレも設置され、現代のニーズに合わせた進化を遂げています。

<乗車記(砥堀駅での行き違い)>
姫路駅12:43発の列車は、ワインレッドが鮮やかな103系3500番台。
短い乗車時間、スマートフォンのレンズを向けたのは車窓ではなく、運転台の後ろ。 加速とともに唸りを上げるMT55形モーターの重低音。
今の静かな電車では決して味わえない、この「昭和の爆音」を残しておきたかったのです。
砥堀(とおぼり)駅で、ワインレッドの車体同士が静かに行き違う瞬間。
そこには、令和の時代に取り残されたような、けれど力強く鼓動し続ける「生きた鉄道史」がありました。

<いつか消えゆくその日まで>
2026年現在、播但線でも新型車両への置き換えが現実味を帯びてきています。
製造から半世紀。徹底したメンテナンスで守られてきたこの「顔」と「音」も、いつか終わりを迎えます。
姫路城の石垣が歴史を語り継ぐように、この103系もまた、日本の戦後鉄道史を語る生きた証人。
もし皆さんも姫路を訪れる機会があれば、お城の後にぜひ、播但線のホームを覗いてみてください。そこには、昭和の熱気がそのまま残っています。

【かつての103系】



【今回撮影した動画をYoutubeに公開しました】
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