
2026年3月13日。
メーテルの声を演じた池田昌子さんの訃報が流れた。
「銀河鉄道999」を見て育った世代にとって、メーテルの声は作品そのものと切り離せない存在だった。
池田昌子さんの声で語られるメーテルの言葉は、いつも鉄郎を導くようであり、どこか遠くから見守っているようでもあった。
ニュースを知ったとき、あの静かな声が頭の中に浮かんだ。

私は、まさに「銀河鉄道999世代」である。
1978年に始まったテレビアニメを、毎週木曜夜7時、テレビの前で釘付けになって見ていた。
母を失った鉄郎が、機械の体を手に入れるために銀河鉄道999で宇宙を旅する。
その旅の中で、さまざまな星の人々と出会い、別れ、少しずつ成長していく。
その旅のそばには、いつもメーテルがいた。
優しく導き、ときに突き放すような言葉を残し、どこか孤独を感じさせる声。
池田昌子さんの声があったからこそ、メーテルという存在は特別なものになったのだと思う。

2024年12月。1979年に公開された『劇場版 銀河鉄道999』の4Kリマスター版が、ドルビーシネマでリバイバル上映された。
久しぶりに映画館で観た999は、子どもの頃とはまったく違う印象だった。
特に印象に残ったのは音だった。
リアルな汽笛。
そして、かつての鉄道で聞こえていたレールの継ぎ目を通過するときのジョイント音。
機関車が多くの客車を引いて走る長い列車。
いまでは日本からほとんど姿を消してしまった、あの長大編成の列車の音。
999号が地球を出発するシーンで響くそのジョイント音が、驚くほどリアルに響いた。
その瞬間、映画の世界というより、昔の自分があこがれた鉄道の記憶が一気に蘇ってきた。
リアルな音と映像。そして、長い列車。
映画の冒頭から、なぜか涙が止まらなかった。
あの感覚は、ドルビーシネマでなければ気づかなかったかもしれない。

そして劇場版のラストシーン。
鉄郎がホームに立ち、メーテルに問いかける。
「もう会えないのか?」
メーテルは静かに答える。
「いつか私が帰ってきて、あなたの傍にいても、あなたは私に気が付かないでしょうね。」
そして、あの言葉を残す。
「私は、あなたの想い出の中にだけいる女。私は、あなたの少年の日の心の中にいた青春の幻影。」
その言葉を残して、銀河鉄道999は発車していく。



そして流れるナレーション。
「今、万感の思いを込めて汽笛が鳴る。今、万感の思いを込めて汽車が行く。
一つの旅は終わり、また新しい旅立ちが始まる。
さらばメーテル。さらば銀河鉄道999。さらば少年の日。」

映画が終わり、照明がついても私は席を立つことができなかった。
周りの人たちは出口へ向かっていたが、私はしばらくその場に座ったままだった。
涙が止まらなかった。
メーテルは鉄郎の心の中にいる女性だ。
そして同時に、私の心の中にもいる。あの多感な時代の少年が、今でもどこかにいる。
池田昌子さんの訃報を知った今、その少年がまた泣いている気がする。
メーテルの声で、少年時代を照らしてくれてありがとう。
鉄郎と同じように、私も少しずつ大人になった。
それでも、あのホームの記憶は消えない。
遠くで汽笛とジョイント音が鳴り響く中、999号は今もどこかの銀河を走っている気がする。
池田昌子さんの声で生まれたメーテルは、これからも多くの人の記憶の中に残り続けるのだと思う。


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