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フリーゲージトレインはなぜ終わったのか? 挫折の理由とスペインとの違い《AI嬢ミナと語る025》

3世代目フリーゲージトレイン 2014年製造

かつて「夢の直通列車」として注目を集めた、フリーゲージトレイン(FGT)。
異なるレール幅を自由に行き来できるその仕組みに、日本は約30年・総額500億円超を投じました。

2025年7月、その最後の試験設備が熊本県・八代市で静かに撤去され、フリーゲージトレインの物語は終わりを迎えました。
“軌間可変電車”に託された夢は、なぜ現実に届かなかったのか──。
その足跡を、ミナとたどってみました。

ミナ:
「2025年7月4日のニュースで、熊本県八代市にあった“フリーゲージトレイン”の軌道可変装置が撤去されたって……。フリーゲージトレインって、どんな列車だったの?」

汽車のり:
「ひとことで言えば、レールの幅が違う新幹線と在来線を、乗り換えなしで直通できるようにした“軌間可変車両”だよ。
 2022年9月23日に開通した西九州新幹線は、武雄温泉~長崎の区間を走っているけど、博多から長崎まで行くには、武雄温泉駅で特急から新幹線に乗り換える必要が発生してしまった。
 本来はこの乗換をなくして、博多~長崎まで同じ車両で直通を実現するために開発されたのが、フリーゲージトレインだったんだ。」

武雄温泉駅での在来線から西九州新幹線への乗り換えイメージ
フリーゲージトレインが完成していれば、この乗換はなかった。

ミナ:
「それって、北陸新幹線も同じだよね?」

汽車のり:
「そうだね。2024年3月16日の敦賀開業で、従来特急列車で直通出来ていた、大阪〜福井〜金沢が、敦賀で“分断”されてしまった。

ミナ:
「じゃあ、フリーゲージトレインがあれば、それが解消できていたんだね?」

汽車のり:
「うん。でも……そこにはどうしても超えられない壁があったんだ。」

ミナ:
「でも、試験車両も何代かあったんだよね?」

汽車のり:
「1998年に第一次試験車両が製造されて、新幹線や在来線だけじゃなく、アメリカでの走行試験まで行われた。耐久試験のために丸ごと車両を送り、まさに技術の粋を集めた挑戦だったよ。」

初代フリーゲージトレイン 1998年製造
1999年4月~約2年間 アメリカ・プエブロ鉄道試験線にて高速走行試験等実施

ミナ:
「アメリカでも? フリーゲージって、日本だけの話じゃなかったんだ……」

汽車のり:
「うん。たとえばスペインでは1960年代からTALGOとして実用化されてるし、スイスでも実用化された。
中国では2020年に“時速400km”対応の軌間可変車両を発表して、量産を見据えた試作車を開発してる。」

ミナ:
「えっ、400km!? しかも、商用化も視野に入れてるんだ……」

汽車のり:
「うん。中国はゲージ幅が違う“ロシアや中央アジアと直通できる”っていう国家戦略の中で、寒冷地でも使えるようにマイナス50度対応の技術まで組み込んでる。」

中国のフリーゲージトレイン 2020年製造

ミナ:
「……じゃあ、日本だけが途中でやめちゃったの?」

汽車のり:
「そうなんだ。今は、もう“計画中止”になってる。実用化は見送られたんだよ。」

ミナ:
「えっ、どうして? そんなに便利そうなのに……」

汽車のり:
「理由はいくつかある。たとえば高速走行すると、可変機構に使われてる車軸がすぐに摩耗しちゃうとか、交換の頻度が高すぎてコストが跳ね上がるとか。
構造が複雑なぶん、車両の価格も2倍以上になるって言われてたし、安全性の面でも、完全に不安が払拭できなかった。」

ミナ:
「……それって、かなり厳しい条件だったんだね。」

汽車のり:
「うん。しかも最高速度も270km/hくらいが限界で、新幹線で他の車両との共存が難しかった。他にもいろんな問題が重なって、30年で答えを出せなかったんだ。」

スペインのフリーゲージトレイン「Renfe130系」
中間車両は「Talgo VII」なのですが、AIは正しく表現できてません

ミナ:
「スペインTALGOの話、詳しく聞きたいな。」

汽車のり:
「スペインでは“タルゴ社”が軌間可変客車を半世紀以上前1968年から運用していて、
かつては寝台列車としてスペインとはゲージ幅の異なるフランス・パリまでの夜行列車やスイス・ジュネーブまでの国際列車が走ってた。
今でも“Renfe130”などの列車が、標準軌と広軌の区間を日常的に直通してる。」

ミナ:
「広軌と標準軌かぁ……日本と違って“狭軌”じゃないんだね。」

汽車のり:
「そう。“広軌→標準軌”なら、最小でも1,435mm。つまり、台車に使えるスペースに余裕がある。
日本の場合は“標準軌→狭軌(1,067mm)”だから、最小幅がスペインより狭く設計がシビアになる。
可変機構も、モーターやブレーキも、小さい台車に詰め込まないといけないから、構造的にかなり無理があったんだ。」

ミナ:
「台車に入るスペースが全然ちがうんだね……」

汽車のり:
「そう。だから、日本のフリーゲージは“走れること”は証明できても、“現実に走り続けられる技術”までは持てなかった。」

スペインの元祖フリーゲージトレイン「TALGOⅢ」
1968年からゲージの異なるフランスに乗り入れていた。

ミナ:
「スペインのTALGOって客車だったよね?」

汽車のり:
「うん。今のスペインの高速列車にはTALGO型の客車を使っているものがあるけど、両端に機関車をつけた“動力集中方式”になっている。
列車全体が広軌と標準軌を直通運転するから、すべての台車に軌間可変装置がついてる。」

 

ミナ:
「日本で……もう“フリーゲージトレイン復活”の可能性はないのかな?」

汽車のり:
「完全にゼロとは言わないけど、新幹線直通を前提にした構想は、止まってしまった。
現実的には、コスト面や整備の簡便さを優先して“リレー方式”で対応する選択がとられて、いま分断されている西九州新幹線も北陸新幹線も、時期はわからないけど、フル新幹線で延伸される計画になっている」

ミナ:
「でも、軌間が違うっていう課題は、他の路線にもあるよね?」

汽車のり:
「そう。たとえば近鉄では、標準軌の京都線・橿原線と、狭軌の吉野線をつなぐ軌間可変車両の構想があるし、東京では“蒲蒲線”っていう、東急と京急をつなぐ計画では、将来的に軌間可変が議論されてる。」

ミナ:
「じゃあ……フリーゲージって、まだ“これから”の可能性もあるってこと?」

汽車のり:
「うん。新幹線で使う夢は終わったかもしれないけど、都市交通や地域鉄道の中で、
ちがう形で生きていく可能性はある。技術そのものは、まだ眠ってるだけかもしれないから。」

ミナ:
「またどこかで、その夢の続きを見られたらいいね。」

熊本総合車両所に留置されていた3代目フルーゲージトレイン(2020年撮影)

四国鉄道文化館で保存されている2代目フリーゲージトレイン(2021年撮影)

<前回のミナ旅>

kishanori.hatenablog.com

 

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