旅と風景、ときどき列車

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札幌-函館 最速2時間59分 “振り子特急”キハ281系「スーパー北斗」の記憶《AI嬢ミナと語る 009》

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かつて、函館のホームに、すこし丸みを帯びた銀色の先頭車が停まっていた。
車体には「SUPER HOKUTO」の文字。
それは、北海道を縦断して走った、振り子式の高速特急──キハ281系気動車の姿だった。

札幌と函館を、わずか2時間59分で駆け抜けたその速さは、北海道の在来線に夢と革新をもたらした。

忘れかけていた思い出を、AI嬢ミナと一緒にたどる今回の「AI嬢ミナと一枚の記録から」は、JR北海道 キハ281系気動車スーパー北斗」を語ります。

 

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<ミナ>
わぁ……この列車、なんだかすごく速そう。銀色のボディに「スーパー北斗」って、大きく書いてある……!

<汽車のリ>
これはね、キハ281系気動車っていう特急列車だよ。1994年に登場して、「スーパー北斗」としてデビューした、北海道を代表する特急だったんだ。

<ミナ>
そっか……これ、ディーゼルで走るやつだよね?なんか顔つきもすごくシャープで、まさに速さのために生まれたって感じ!

<汽車のリ>
そのとおり。このキハ281系は、日本で初めて量産された振り子式の気動車だった。カーブの多い北海道でもスピードを落とさずに走るために、車体が自動で傾く仕組みになってたんだ。

<ミナ>
えっ、振り子!?カーブで身体がふわってなるやつでしょ?乗ってみたかったな〜。

<汽車のリ>
当時としてはすごく先進的だったよ。
そしてなにより衝撃だったのは、札幌から函館までの最速運転──なんと2時間59分だったんだ。

<ミナ>
え!?2時間台!?
え〜〜、それってもう新幹線じゃん……!
ディーゼルの特急でそんなに速く走れるなんて、びっくりだよ!

<汽車のリ>
それまでの「北斗」はキハ183系っていう車両で、所要時間は3時間29分だったから、30分も短縮された。
表定速度も、日本の在来線の中でトップクラスだったんだよ。

<ミナ>
表定速度って、たしか平均のスピードだよね?

<汽車のリ>
そうそう。停車や発車も含めた、実際の走行全体の平均スピード。
このときのスーパー北斗は、約107km/h。在来線で100キロ超えって、なかなか出せない数字なんだ。

<ミナ>
すごいなぁ……でも、今のスーパー北斗って、こんなに速くないよね?
この「2時間59分」って、今じゃもう見かけない気がする……

<汽車のリ>
うん、今は最速でも3時間40分くらいかかってる。
いろんな理由があってね。

<ミナ>
え〜、なんで?
車両が違うからってだけじゃ、ここまで違いが出るのかな……?

<汽車のリ>
確かに、今走ってるのはキハ261系っていう新しい気動車で、これは振り子が付いてない。だからカーブではスピードを落とさなきゃいけないんだ。
でもそれだけじゃないよ。

<ミナ>
ほかにもあるの?

<汽車のリ>
あるある。たとえば停車駅。
1994年の最速達便──たとえば「スーパー北斗2号」は、札幌と東室蘭の間をノンストップで、次の停車駅がもう函館だったんだ。

<ミナ>
えっ!?東室蘭だけ!?
それで2時間59分!?……速いっていうより、もはや飛んでるレベルじゃん!

<汽車のリ>
だよね(笑)
同じ2時間59分の別の便では、苫小牧と東室蘭の2駅だけに停車してたのもあるけど、それでも全体で3時間を切ってたんだよ。

<ミナ>
すごいなぁ……。でもさ、今はもっと駅に止まるよね?

<汽車のリ>
うん、今は南千歳・登別・洞爺・森とか、乗る人の多い場所にこまめに止まってる。利便性を重視したダイヤなんだ。

<ミナ>
なるほど……でも、それだけじゃなくて、安全とかも関係あるんじゃない?

<汽車のリ>
そのとおり。
JR北海道は、過酷な自然環境の中で「とにかく走りきること」を最優先にするようになった。
無理なスピードを出すよりも、安定して、安全に、確実に運ぶ──それが今の方針なんだ。

<ミナ>
うん……速さもかっこいいけど、ちゃんと着くことがいちばん大事。
この写真のキハ281系は、その“夢の速さ”を叶えてくれた、特別な存在だったんだね。

 

【補足説明】
車両形式:キハ281系気動車

運行開始:1994年(スーパー北斗としてデビュー)

特徴:

日本初の量産型・制御付き自然振り子式気動車

曲線通過速度は「本則 +30km/h」を実現

在来線気動車で初めて130km/hの営業運転を達成

それまでの「北斗」(キハ183系:3時間29分)を大きく短縮し、最速2時間59分で札幌〜函館を走破

この「2時間59分」は、表定速度 約107km/h。日本の在来線における最高水準の記録だった

最速便の停車駅(1994年当時)(いずれも所要時間2時間59分)

スーパー北斗2号(上り):札幌、東室蘭、函館(3駅)

スーパー北斗19号(下り):札幌、苫小牧、東室蘭、函館(4駅)

引退とその後:

キハ281系は2022年9月30日をもって定期運行終了

後継車両はキハ261系(非振り子式)へ統一

停車駅の増加や安全性重視の運行方針により、所要時間は約3時間40分に

かつての「夢のような速さ」は役目を終えたが、記録と記憶は今も残り続けている

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